あたしの実家は超がつくほどの田舎です。
そして、あたしは田舎が嫌いです。
何もないのはまだいいんだけど、
べったりした人間関係が本当に嫌。
よく言えば濃い関係ってことなんでしょうけど、
一歩間違えたら陰湿なだけなんです。
田舎の壮絶マウントで歪んだ兄を救う方法はセックス位だった
あたしの兄も、その陰湿さのおかげで被害を被った一人でした。
直接暴力を振るわれたりというわけではなかったので
いじめ、まではいかないかもしれないですが、
クラスでよってたかってマウント取られる対象になっちゃって。
しかも、そこまでバカにされる理由が
童貞だからって言うんだから救いようがないです。
自分の中だけでコンプレックスに感じるのはありにしても、
周りから言われることじゃないじゃないですか。
でも、常識ではおかしくても、
うちの田舎ではさもありなんって感じでした。
聞いたことがあるかもしれないけど、
田舎って初体験が都会以上に早いんです。
それも、全体的に。
ただ単に、やることが他にないからだと思いますけどね。
だから、男の子たちもそうでしたが、
女の子同士でのマウントの取り合いもひどかったです。
わたしは、運のいいことに、かなり早い時期に
他の学校の子に告白されて、2、3回だけだけど
エッチしたことがありました。
だから、マウントを取られはしませんでした。
でも、兄はそういう機会がなかったんです。
セックスできるかどうかなんて運もあると思うんですけど、
兄はそういう意味ではとことん運がなかった。
それに、押しも弱かったのが
うちみたいな封建的な地方では致命的でした。
都会だったら優しい人ってことになるんでしょうけど。
それでも、最初のうちは兄も苦笑いしながらも
受け流していたようでした。
でも、それもあんまり続くと限度があります。
いくら暴力を振るわれなくたって、
人間、常にバカにされていたら
自信もなくなります。
日に日に、兄の表情は暗くなっていきました。
あたしはそんな兄をみながら、気が気じゃありませんでした。
このままいったら、兄がおかしくなるんじゃないかと思ったんです。
心配しすぎだったとは今でも思いません。
なにしろ、田舎のマウントって本当にしつこくて、
追い詰めるところまで追い詰めますから。
それでいて、仮におかしくなったとしても、
周りはだれも責任とってくれないです。
もっと強くならないとだめだよなあとか偉そうに言うだけ。
実際、兄とは理由は違うけど
近所にそれでおかしくなった人、一人いましたから、
あたしの危機感は兄が暗くなるのと歩調を合わせるように
増していったんです。
実家にいた頃、兄とはよくゲームを一緒にしていました。
兄はそんな調子だったから時間を持て余していましたし、
あたしも他校の男の子と別れてからは、
やることなんてありませんでした。
身内がこんな立場になったら、
いい顔して周囲にあわせるのにも嫌気がさしますから。
とは言っても、その頃にはそのゲームさえも、
盛り上がらないものになっていました。
以前は本気で勝ちにきていた兄も、
最近では手慰みにやってるだけなのが見え見えです。
そういうあたしも、気は乗りませんでした。
どうすれば兄が以前みたいな明るい性格に戻ってくれるだろうと
頭を悩ませていました。
一度こうなった以上、マウントを取るのをやめさせるのは、
多分無理です。
童貞を捨てるだけならできるかもしれないけど、
ここまでマウントを取られることが当たり前になっている今では
それを変えることは難しいでしょう。
そうなると、兄に卒業まで耐えてもらうしかありません。
でも、それができるか。
頭を悩ませていると、兄がふと、隣に座っていたあたしを小突きました。
「お前、足、閉じろ」
「え?」
下半身をみると、あたしはいつのまにか、
普段着にしていたジーンズ地のミニスカートを履いたまま
両脚を全開にしていました。
下半身にまで気が回らなかったんです。
あわてて足を閉じ、つとめて明るい口調で
兄に声をかけました。
「ごめんごめん。パンツ見えちゃってた?」
「横からみても丸見えだったぞ、まったく」
あたしがそこでヘンに思ったのは、兄の顔が多少赤くなっていたからです。
あたしとは目も合わせようとしません。
照れているんだな、というのはすぐわかりましたが、
問題はそこでした。
兄妹なんですから、たかがパンツが見えたくらいで気にする理由がないんです。
それでもあたしは冗談めかして言いました。
「やっだなー、兄貴、どうしたの?照れちゃった?」
「…まあな。お前と違って、俺は童貞だから」
「え?」
「お前にだって興奮するって言ってんだよ。わかんないだろうけど」
思った以上にどんよりとした、そして直球の返事。
思わず見返した兄の下半身は、
少し前に見た他校の男の子と同じように盛り上がっていました。
これ、本当にまずい。
童貞だから妹に興奮する、なんてわけはありません。
あんまりバカにされて卑屈になりすぎたせいでしょうか。
女の子への感覚まで、もうおかしくなっているようでした。
「まあ、心配すんな。別に手、出そうとは思ってないからさ」
「う、うん…」
「ああ、説得力ねえか。こんなになってたら怖がるなって方が無理だよなあ」
捨て鉢もいいところ。
見ていられませんでしたし、あたしの危機感は頂点に達しました。
ただ、あたしがその方法を思いついたのは、まさにこの時でした。
卒業まで耐え抜いてもらえるかもしれない、
感覚がおかしくなった今だからこそ使える方法。
「兄ちゃん、それって、あたしとしたいって意味?」
「ああ。やれるもんならだれとだってやりたいよ」
「一応聞くけど、それができれば、昔みたいな兄ちゃんに戻ってくれる?」
「…まあ、童貞捨てられるんなら、暗くなってる場合じゃないだろ」
「なら、する?」
「…おい?」
兄の声が裏返りました。
まさかあたしが自分のバカな妄想を受け止めるわけがない。
それが現実になって、慌てたんでしょう。
でも、あたしは本気でした。
もう、今の兄の立場を変えることは多分できない。
あたしとしたところで、人に言えるわけもないから、状況は何も変わらない。
でも、それでせめて自信だけは持てるんだったら。
なんだったら、兄が卒業まで耐えるための、手慰みでもいい。
「兄ちゃん、あたしももう、今みたいな兄ちゃん、見てられないんだよ」
「…すまん」
「それは仕方ないよ。でも、おかしくなられたら困る」
「おかしいか」
「もう充分おかしいよ。今の兄ちゃん。
でも、それ以上おかしくならないでくれるなら、エッチくらいさせたげるよ」
正直に言えば、同情ではなく、打算でした。
でも、心配していたのだけは本当。
そして、エッチさせることでそれを止められるというなら、
あたしにとっては安いものだったんです。
さいわい、兄はそこだけは読み取ってくれたようでした。
「…はは、我ながら見てらんないな、妹にここまで言わせちまうと」
兄は力なく、自嘲するように笑いました。
兄を誘ったものの、あたしだって経験はわずかなものです。
二人で裸になって、
慣れない手つきで兄にゴムをはめるあたしを
兄は目を白黒させて見下ろしていました。
こんな状況なのに、兄の性器がいきりたっているのが、とても滑稽でした。
なんであたしは、こんなことをする羽目になったんだろう。
自分で言い出しておきながら、あたしは思い、
兄を追い込んだこの土地を呪いました。
はじめてだし、やっぱり正常位の方がいいだろうか。
兄にはこだわりはなさそうでしたが、
あたしも自分から腰を振るような気分ではありませんでした。
「よっと…こんな感じでいいのかな」
「多分。後はその辺に…」
指さしながら指示している様子は、
とてもエッチの前とは思えませんでした。
それでも、なんとか兄の性器の先は、
あたしの膣口をとらえたんです。
「ここか」
「うん」
今からあたしは、兄に犯される。
分かっていても、身が固くなりました。
と、兄が身体を前に傾けてきて、あたしの耳元でつぶやきました。
「すまん」
一言だけでしたが、その声は、
以前のやさしい、明るい兄を幾分かでも思い出させるものでした。
ふっと昔を思い出して緊張がゆるんだとき、
兄とあたしの性器は繋がり合っていました。
「く…う」
兄は気持ちよさそうでしたが、
それにしてはその顔は苦り切っていました。
兄にとっては、これ以下の初体験なんて存在しなかったでしょう。
でも、あたしだって、似たような顔をしていたと思います。
もともとセックス向けの身体ではあるんでしょう、
前の数回の経験だけでも、それなりには感じるようになっていました。
だから、兄のだって、入ってくれば気持ちはよかったんです。
でも、気持ちは別。
どんなに突かれても、自分が濡れてるのがわかっても、全然嬉しくない。
あの、他校の男の子としたときの充実感なんて、全然ありませんでした。
当たり前です。
したくてしてるんじゃないんだから。
他にどうすればいいか、思いつかなかったからこんなことになってるんだから。
兄を少しでも元気づけようと声はあげましたが、
いくらはじめての兄だって、それが演技だと気づいていたと思います。
苦々しい時間は、兄の射精とともに終わりました。
あたしの中から引き抜かれたゴムの先には、兄の精子が大量に溜まっているのが見えました。
こんな気分でも出せるんだな。
そう思う自分自身も、息が上がっていました。
イくことは無理でも、自分で思う以上に身体が感じてはいたみたい。
それが、なんだかすごくみじめだった。
それでも、兄は言いました。
「心配かけたな」
「いいよ…少しは元気、出た?」
「ああ」
あたしにもわかる、みえみえの嘘。
でも、それでも兄の顔は、さっきまでとは少しは違って見えました。
「我慢できなくなったら、言って。あたしの身体で何とかなるなら、貸すからさ」
「そうならないようには努力するよ…」
それで、兄との最初のエッチはおわりました。
結果だけを言うと、あたしの予想通り、
兄へのマウントはとうとう卒業まで変わることはありませんでした。
ただ、兄はなんとかそれに耐えきりました。
それまでの間、あたしは何もできませんでしたが、
兄の方があんまりつらそうなときは自分から何度かエッチさせました。
兄のよりどころになれたかは今でもわかりません。
ただ、以前のように捨て鉢な態度だけは取らなくなりましたし、
回を重ねれば技も上がりますから、あたしがイくことも少しずつ出てきました。
気分が乗らないのは相変わらずでしたが、それでも本気の声が出ることもあったんです。
それが少しでも兄の自信につながったなら本望だし、
なにより、最後まで耐えきってくれただけでも十分でした。
兄はかなり早い時期から敢えて実家から遠い場所で就職先を探しており、
卒業と同時に実家を出ていきました。
両親は寂しそうでしたが、兄の意思は固かったです。
兄は出がけに、あたしに「ありがとな」と一言いうと、
そのまま後ろを振り返ることはありませんでした。
その一年後に、あたしも卒業を迎え、同じように家を出ました。
もちろん、あの実家に戻る気がないのも兄と同様です。
今気になっているのは、将来両親をどうするか。
たまに兄と電話で話すと、決まってその話になります。
何があろうと絶対にあの田舎には戻りたくないというのは共通意見ですから。
「こっちに呼ぶしかないよなあ」
「お金、ないよね。今のところ」
「まあ、まだ先は長いしな。こっちで家買えるまで稼ぐしかないだろ」
まだ二十代なのに、こんな話をしている兄妹っていうのも
どうなんだろうと思います。
でも、あたしたちをそんな風にしてしまったのは、
間違いなくあの土地なんです。
ホントに、田舎なんてロクなものじゃないですよ。